検事と弁護士の違い|立場・仕事・資格をくらべてわかりやすく

検事と弁護士の違いを、法廷での立場や仕事からくらべる記事のアイキャッチ。誰もいない法廷と向かい合う机

当サイトの記事は編集部が法令や法務省・検察庁・最高裁判所などの公的機関の公開情報を調べて独自に執筆しています。個別の事件や法律相談には対応していません。記事内に司法試験・予備試験の情報や対策講座への案内を含む場合があります。

検事と弁護士は、どちらも法律の専門家で、刑事裁判の法廷にも登場します。でも、何がどう違うのかと聞かれると、うまく説明しにくいですよね。

結論から言うと、検事は社会全体(公益)の代表として裁判を求める公務員、弁護士は依頼した人の権利を守る立場の専門家です。入口の司法試験は同じでも、立場と仕事の範囲がはっきり違います。

この記事を読めば、検事と弁護士の違いを、法廷の立ち位置・仕事・身分・資格の4つの面から説明できるようになります。

目次

検事と弁護士の違いは?「誰の立場で動くか」がいちばん違う

先に結論

検察庁法では、検察官は「公益の代表者」とされています。一方、刑事事件の弁護士は、裁判所の説明では「被告人の正当な権利利益を擁護する」役割です。誰の立場で動くかが、いちばん大きな違いです。

検事と弁護士の違いを一言でいうなら、「社会のために事件を裁判にかける人」と「疑われた人のために言い分を伝える人」です。

検事(検察官)は、警察から送られた事件などを調べ、裁判にかけるかどうかを決めます。裁判にかけたら、法廷で証拠を示して、罪があることを立証します。

弁護士は、刑事事件では「弁護人」として、疑われている人や裁判にかけられた人の側に立ちます。その人に有利な事情を主張し、証拠で示すのが仕事です。

検事(検察官)
  • 公益の代表者として動く
  • 起訴するかどうかを決める
  • 法廷で罪を立証し、刑の意見を述べる
  • 国家公務員として働く
弁護士(弁護人)
  • 依頼した人の権利を守る立場で動く
  • 起訴する権限はない
  • 法廷で被告人に有利な事情を主張する
  • 公務員ではなく、弁護士会に入って働く

『検事が正義の味方で、弁護士は悪い人の味方なの?』と感じる方もいるかもしれません。でも、そう考えるのは正確ではないんです。

日本弁護士連合会の説明では、弁護人の最も重要な役割は「えん罪の防止」です。行き過ぎた刑罰や違法な手続きが見逃されないよう、被告人の立場から意見を述べます。

検事と弁護士が反対の立場から主張し合うことで、裁判官が公平に判断できる仕組みになっているんですね。

同じ事件でも、見る方向が違う

例えば、ある事件で被疑者が「自分はやっていない」と話しているとします。検事と弁護士は、同じ事件を別の方向から見ることになります。

同じ場面で検事が考えること弁護士が考えること
被疑者が否認している証拠で罪を立証できるか本人の言い分を裏づける事情はあるか
証拠がそろってきた起訴するか、不起訴にするか手続きに問題はなかったか
裁判が始まった罪と刑についての意見を述べる有利な事情を主張し、反論する

「この証拠で、裁判でも罪を証明できるだろうか」
「本人の言い分を、どうすれば裁判官に伝えられるだろうか」

検事と弁護士の頭の中を言葉にすると、こんなふうになります。どちらも、事実をきちんと明らかにするための問いなんです。

「検察官と弁護士」でも同じこと

検察官と弁護士の違いも、ここまでの話と同じです。検事は検察官の官名の一つで、ふだんはほぼ同じ意味で使われています。

検察官と検事の呼び方の関係は検察官と検事の違いで紹介しています。

刑事裁判の法廷で見る、検事・弁護人・裁判官の立ち位置

法廷は3つの立場でできている

刑事裁判の法廷では、裁判官が判断し、検事が罪を立証し、弁護人が被告人の側から主張します。検事・裁判官・弁護士の法曹三者が、それぞれ違う役目を受け持っています。

検事と弁護士の違いは、刑事裁判の法廷を思い浮かべるとよく分かります。法廷では、裁判官が正面に座り、検事と弁護人が向かい合う形が基本です。

どちら側にどの席があるかは法廷によって違うこともあるので、傍聴する時は案内で確かめてみてください。ここでは席の場所より、「誰のために」「何を目指すか」に注目してみましょう。

刑事裁判の法廷で、正面の裁判官と、向かい合う検察官・弁護人の立ち位置と、それぞれが誰のために何をするかを示した図解
比べる点検事(検察官)弁護士(弁護人)裁判官
誰のために社会全体(公益の代表者)被疑者・被告人の権利のためどちらにも偏らない
何を目指すか真実の立証と適正な刑の実現被告人の正当な権利利益を守る証拠をもとに公平に判断する
法廷でする主なこと起訴状朗読・立証・論告求刑有利な事情の主張・立証・最終弁論証拠を調べ、判決を言い渡す
身分国家公務員公務員ではない憲法で身分が保障された裁判官

裁判の流れの中での役割の違い

刑事裁判は、検事が起訴状を朗読するところから始まります。刑事訴訟法では、検察官はまず起訴状を朗読しなければならないとされています。

その後、検事は証拠で何を証明するかを述べる「冒頭陳述」を行います。検察庁の説明では、これによって被告人の側が防御の範囲を知ることができるんです。

刑事裁判の主な流れと、それぞれの出番
  1. 検事が起訴状を朗読する
  2. 裁判長が黙秘できることを伝え、被告人と弁護人が意見を述べる
  3. 検事が冒頭陳述をし、証拠調べを請求する
  4. 弁護人も証拠調べを請求し、証人に質問する
  5. 検事が論告求刑を行い、弁護人が最終弁論を行う
  6. 裁判官が判決を言い渡す

刑事訴訟法では、証拠調べを請求できる人として、検察官・被告人・弁護人が並んで書かれています。どちらか一方だけが証拠を出すのではなく、両方が出し合うんです。

検事は「何でも起訴する人」ではない

『検事は、とにかく罪を重くしようとする人なの?』と思われることもあります。でも実は、そうとは限らないんです。

検察庁の説明では、検察官は、確かな証拠で有罪判決が得られる高い見込みがある場合に限って起訴することにしています。また、罪を犯したことが明らかでも、事情によって起訴しない「起訴猶予」という判断もあります。

公益の代表者というのは、罰することだけを目指すのではなく、社会全体にとって適切な結論を考える立場ということなんですね。

求刑と判決は別のもの

検事が述べる「求刑」は、どのくらいの刑がふさわしいかという検察官の意見です。最高裁判所の判例では、裁判官は検察官の求刑に拘束されないとされています。

つまり、検事も弁護人も意見を述べる立場で、最後に決めるのは裁判官です。求刑については検事の求刑とは?でくわしく紹介しています。

裁判官との違いは検事と裁判官の違いで紹介しています。

仕事の範囲の違い:刑事だけか、民事もか

弁護士のほうが扱う分野が広い

検事の仕事の中心は刑事事件です。弁護士は刑事事件の弁護だけでなく、民事の争いや相談など幅広い分野を受け持ちます。

『検事と弁護士、ふだんはどんな仕事をしているの?』と気になる方も多いはずです。法廷の外の仕事まで含めると、2つの違いはさらにはっきりします。

仕事検事弁護士
刑事事件の捜査自ら取調べ、警察を指揮することもある捜査はしない
起訴するかの判断するしない
刑事裁判罪を立証する弁護人として被告人の側に立つ
民事の争い国が当事者の訴訟を担当する訟務検事がいる依頼人の代理人になる
裁判の執行監督する関わらない

検事の仕事は「起訴まで」と「法廷」

検事は、警察から送られた事件について、被疑者や参考人の取調べをしたり、警察を指揮して補充捜査をさせたりします。そのうえで、起訴するか不起訴にするかを決めます。

起訴した事件では、法廷で立証を担当します。判決のあとも、裁判の執行を監督するのが検察官の役目です。仕事の全体像は検察官の仕事内容で紹介しています。

検事の1日をのぞいてみる

検察庁のパンフレットでは、捜査を担当する検事のある1日が紹介されています。午前は警察から送られた身柄事件の記録を読み、被疑者の言い分を聞いて、勾留を請求するかを判断します。

午後は担当事件の記録を検討し、警察と相談して補充捜査を頼んだり、参考人や被疑者の取調べをしたりします。最後は、事件をどう処分するか上司の決裁を受けます。

公判を担当する検事なら、裁判所に出かけて立ち会い、戻ってから証拠や論告の準備をします。証言する予定の人との打ち合わせも大事な仕事です。

民事の裁判を担当する検事もいる

「検事は刑事だけ」と思われがちですが、例外もあります。法務省の説明では、国が当事者になる民事・行政訴訟で国の代理人として活動する「訟務検事」がいます。

訟務検事は、民事の裁判で国の側に立つ人です。いわば、国のための弁護士のような立場といえますね。

弁護士は、疑われた段階から関われる

弁護士は、裁判が始まる前の、疑われている段階から関わることができます。検察庁の説明では、勾留された被疑者が貧しいなどの理由で弁護人を頼めない時は、国選弁護人を請求できる制度があります。

裁判所の説明でも、弁護人は自分で頼む私選弁護人が原則で、貧しいなどの事情がある時は国選弁護人がつくとされています。

自分や家族の手続きが気になる方へ

この記事は一般的な制度の説明です。実際の事件での対応は、弁護士に相談してみてください。法テラスや各地の弁護士会でも、相談先の案内を受けられます。

身分と働き方の違い:公務員かどうか

検事は国家公務員、弁護士は弁護士会に入る専門家

検事は一般職の国家公務員で、給料は法律で決まった俸給表で支払われます。弁護士は公務員ではなく、日本弁護士連合会に登録し、弁護士会に入って活動します。

身分の違いも、検事と弁護士を比べるうえで大事なポイントです。進路として考えている方には、ここがいちばん気になるところかもしれませんね。

比べる点検事弁護士
身分一般職の国家公務員公務員ではない
所属検察庁・法務省など弁護士会(日弁連に登録)
給料の決まり方検察官の俸給等に関する法律の俸給表働き方によってさまざま
働く場所全国転勤がある事務所や働き方で変わる

検事の働き方

検事は国家公務員なので、全国転勤があります。検察庁の採用サイトでは、任官後しばらくは公平性を重視した異動で、その後は適性や希望をふまえた配置になると説明されています。

検察庁法では、検察官は65歳に達した時に退官すると決められています。また、懲戒などの場合を除いて、意思に反して官を失わないという身分保障もあります。

転勤については検事の転勤・異動、給料の仕組みは検事の年収・給料で紹介しています。

弁護士の働き方

裁判所の説明では、弁護士として活動するには、日本弁護士連合会への登録と、全国52の弁護士会のいずれかへの入会が必要です。

弁護士の働き方は、事務所に勤める、自分で事務所を開くなど、人によってさまざまです。そのぶん、働く場所や仕事の分野を自分で選びやすいといえます。

よくある勘違い

「弁護士も公務員」と思われることがありますが、弁護士は公務員ではありません。国家公務員として働くのは、法曹三者のうち検事と裁判官のほうです。

法曹三者の身分をまとめると

検事・裁判官・弁護士の3つを並べると、身分の違いがよく分かります。検事と裁判官は国の仕事、弁護士は民間の専門家と考えてみてください。

法曹三者身分主に働く所
検事一般職の国家公務員検察庁・法務省など
裁判官憲法で身分が保障された裁判官裁判所
弁護士公務員ではない弁護士会に入り、事務所などで働く

資格となり方の違い:入口は同じ司法試験

司法修習までは同じ道

検事も弁護士も、司法試験に合格し、約1年の司法修習を経て、最後の試験に合格するのが基本の道です。分かれるのは、修習を終えたあとです。

検事と弁護士は、資格のとり方の前半がまったく同じです。最高裁判所の説明では、司法修習の最後の試験に合格すると、判事補・検事・弁護士になる資格が得られます。

『じゃあ、同じ試験に受かった人が、あとで進路を選ぶの?』と思いますよね。その通りなんです。

検事・弁護士になるまでの流れ
  1. 法科大学院を修了するか、予備試験に合格して受験資格を得る
  2. 司法試験に合格する
  3. 約1年の司法修習を受ける
  4. 司法修習の最後の試験(いわゆる二回試験)に合格する
  5. 検事は採用されて任官、弁護士は日弁連に登録する
司法試験と司法修習を経たあと、検事・裁判官・弁護士に進路が分かれる流れを示した図解

検事になるには「採用」がある

検事になるには、修習を終えるだけでなく、検事として採用される必要があります。法務省の説明では、司法修習中に採用面接があり、能力・適性・人格・識見などを総合的に判断して採用します。

司法修習では、検察の実務も2か月学びます。実際の事件で取調べなどを体験するので、検事の仕事を知ったうえで進路を考えられるんです。修習から任官までは司法修習から検事任官までで紹介しています。

どちらに向いているか考えるヒント

同じ資格から選べるからこそ、『自分は検事と弁護士、どっちに向いているんだろう』と迷う方も多いはずです。次の問いを自分に投げかけてみてください。

進路を考える時の問い
  • 社会全体のために、起訴するかどうかを判断したいか
  • 一人ひとりの依頼人に寄り添い、言い分を伝えたいか
  • 全国転勤がある働き方を受け入れられるか
  • 刑事事件だけでなく、民事など幅広い分野を扱いたいか

どちらが上ということはありません。自分が大切にしたい働き方に近いほうを選べばいいんです。

検事から弁護士へ、弁護士から検事へ

検事と弁護士は、途中で行き来することもできます。検事を辞めて弁護士として働く人もいれば、弁護士から検事になる人もいます。

法務省は、弁護士経験がおおむね3年ないし15年程度で、検事として少なくとも3年程度勤務できる人を対象に、弁護士からの検事任官を受け付けています。選考は書類審査と面接試験です。

検事を辞めたあとの道は元検事の弁護士(ヤメ検)とは?でくわしく紹介しています。

検事と弁護士の違いについてよくある疑問

この章について

検事と弁護士の違いについて、ネットの質問サイトでよく見かける疑問を、内容を要約して紹介します。

疑問1「検事と弁護士はどちらがなるのが難しい?」

検事と弁護士の違いを知りたい人の中で、特に多いのが「どちらが難しいか」という質問です。ここまで読んだ方なら、入口の試験は同じだと分かりますよね。

違いは、司法修習を終えたあとです。弁護士は日弁連への登録で働き始められますが、検事は採用されることが必要です。

ただ、「検事のほうが偉い」「弁護士のほうが格が下」ということではありません。採用の仕組みが違うだけで、どちらも同じ法曹資格をもとにした仕事です。

疑問2「検事・弁護士・裁判官の偉い順は?」

法曹三者に上下があるのかという質問も、とても多く見かけます。結論から言うと、3つの仕事に偉い順はありません。

法廷では、裁判官が判断し、検事と弁護人がそれぞれの立場から主張します。役目が違うだけで、どれが欠けても公平な裁判は成り立たないんです。

なお、検察官の中には検事総長から副検事までの官名や役職があります。検察の中の序列は検事の階級・役職一覧で紹介しています。

疑問3「どっちの給料が高い?両方とも公務員?」

給料と身分についての質問もよくあります。身分は、検事が国家公務員、弁護士は公務員ではない、という違いです。

給料について、検事は法律の俸給表で決まります。弁護士は働き方によって大きく変わるため、一概にどちらが高いとは言えません。

検事の給料を年齢や年数ごとに示した公表データはありません。俸給表の仕組みは検事の年収・給料で確かめてみてください。

検事と弁護士、どちらに進むにしても、最初の入口は司法試験です。法科大学院に進むか、予備試験から目指すか、独学か講座を使うかも含めて、早めに試験の全体像を知っておくと選択肢が広がりますよ。

司法試験・予備試験の情報

検事をめざすなら、まずは司法試験・予備試験の全体像から

検事になる入口は司法試験です。受験資格の3つのルート(法科大学院・在学中受験・予備試験)や試験の日程を公式の案内で確かめて、自分に合う勉強の進め方を考えてみてください。

無料司法試験・予備試験の案内を見る

試験の日程・受験資格は法務省の最新の案内でご確認ください。

よくある質問

検事と弁護士の違いを簡単に言うと?

検事は公益の代表者として事件を裁判にかけ、罪を立証する国家公務員です。弁護士は、刑事事件では被告人の権利を守る立場から主張する専門家で、公務員ではありません。

検事と弁護士の資格は同じですか?

入口は同じです。司法試験に合格し、司法修習の最後の試験に合格すると、判事補・検事・弁護士になる資格が得られます。検事になるには、さらに採用される必要があります。

検事から弁護士になれますか?

なれます。検事を辞めて弁護士として働く人もいます。反対に、弁護士から検事になる弁護士任官の制度もあります。

検事・裁判官・弁護士の違いは何ですか?

刑事裁判では、検事が罪を立証し、弁護人が被告人の側から主張し、裁判官が証拠をもとに判断します。3つとも司法試験と司法修習を経てなる法曹です。

弁護士は民事の裁判もできますか?

できます。弁護士は刑事事件の弁護だけでなく、民事の争いで依頼人の代理人になります。検事では、国が当事者の訴訟を担当する訟務検事が民事の裁判に関わります。

まとめ

この記事の要点
  • 検事は公益の代表者、弁護士は依頼した人の権利を守る立場
  • 法廷では、検事が立証し、弁護人が被告人の側から主張し、裁判官が判断する
  • 検事の仕事は刑事事件が中心で、弁護士は民事も含めて幅広い
  • 検事は国家公務員、弁護士は公務員ではなく弁護士会に入って活動する
  • 入口は同じ司法試験と司法修習で、検事になるには採用が必要
検事ドットコム

検事ドットコム 編集部

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