特任検事とは?副検事から検事になる検察官特別考試の仕組み

特任検事とは何かを、副検事から検事になる検察官特別考試の仕組みから紹介する記事のアイキャッチ。執務室の机の書類

当サイトの記事は編集部が法令や法務省・検察庁・最高裁判所などの公的機関の公開情報を調べて独自に執筆しています。個別の事件や法律相談には対応していません。記事内に司法試験・予備試験の情報や対策講座への案内を含む場合があります。

「特任検事」という言葉を聞いて、普通の検事と何が違うのか気になった方も多いはずです。

結論から言うと、特任検事とは、副検事を3年以上務めたあと「検察官特別考試」に合格して検事になった人の通称です。司法試験を通らずに検事になる、もう一つの道なんです。

この記事を読めば、特任検事の仕組みと、司法試験ルートとの違いが分かります。

目次

特任検事とは?副検事から検事になった人の呼び名

先に結論

検察庁法では「三年以上副検事の職に在つて政令で定める考試を経た者」を二級の検事に任命できるとされています。この考試が「検察官特別考試」で、こうして検事になった人が一般に特任検事と呼ばれています。

特任検事とは何かを一言でいうと、「副検事から検事になった人」のことです。

『特任検事という役職があるの?』と思いますよね。実は、特任検事は法律の官名ではありません。

法律の上では、特任検事もふつうの「検事」です。法務省や検察庁が「特任検事」という呼び名を使っているかは、この記事の調べでは確認できていません。そのため、この記事では通称として紹介しますね。

法律ではどう決まっている?

特任検事の仕組みは、いくつかの法令に分かれて書かれています。主なものを表にしました。

法令決まっていること
検察庁法 第18条第3項3年以上副検事を務め、考試を経た人を二級の検事に任命できる
検察官特別考試令考試の名前、実施する機関、科目、免除のしくみ
検察庁法 第19条第3項一級の検察官の資格を考える時、司法修習を終えた人とみなす

一つの法律にまとまっていないので、分かりにくいと感じる方も多いはずです。この記事では、この3つをもとに順番に見ていきますね。

副検事と検事の違いをおさらい

副検事と検事の違いを、ここで簡単に押さえておきましょう。

くらべる点副検事検事
働く所区検察庁最高検・高検・地検など
主ななり方公務員の経験と副検事選考司法試験と司法修習
級二級一級または二級

副検事から検事になると、地方検察庁などでも検事として働けるようになります。副検事そのものについては副検事とは?検事との違いでくわしく紹介しています。

司法試験ルートと副検事ルートをくらべてみる

入口・年数・試験の中身がまったく違う

同じ「検事」でも、司法試験から目指す道と、副検事から目指す道では、入口も必要な年数も試験の中身も違います。

検事になる2つの道を、3つの軸で並べてみました。

くらべる軸司法試験ルート副検事ルート(特任検事)
入口法科大学院の修了か、予備試験の合格で司法試験を受ける公務員として決められた職に通算3年以上つき、副検事選考に合格する
必要な年数司法試験の合格後、約1年の司法修習副検事として3年以上の経験
試験の中身司法試験と、修習の最後の二回試験検察官特別考試(筆記7科目と口述4科目)
司法試験ルートと副検事ルートを、入口・必要な年数・試験の中身の3つの軸でくらべた図解

入口のちがい

司法試験ルートでは、まず司法試験の受験資格を得るところから始まります。予備試験には受験資格の制限がないので、学歴を問わず挑戦できますよ。

司法試験の受験資格を得る方法は、法科大学院を修了するか、予備試験に合格するかが中心です。法科大学院には、法学を学んだ人向けの2年コースと、それ以外の人向けの3年コースがあります。

司法試験ルートの受験期間

司法試験は、受験資格を得た日の後の最初の4月1日から5年の間に受けられます。法務省によると、平成26年の改正で受験回数の制限はなくなりました。

副検事ルートは、検察事務官などの公務員として働くところから始まります。働きながら経験を積み、副検事選考に合格して副検事になるんです。

必要な年数のちがい

副検事ルートでは、公務員として通算3年以上の経験を積んだうえで副検事になり、さらに副検事を3年以上務める必要があります。

司法試験ルートは、合格後に約1年の司法修習を経て検事に任官する流れです。どちらが早いかは、司法試験に何年で合格するかによって変わります。

副検事ルートの時間の流れ

副検事ルートで検事になるまでを、時間の流れで並べるとこうなります。

段階やること必要な期間・条件
1検察事務官などの公務員になる国家公務員の採用試験などに合格
2副検事選考の受験資格を得る決められた職に通算3年以上
3副検事選考に合格し、副検事になる筆記と口述に合格
4副検事として経験を積む3年以上
5検察官特別考試に合格し、検事になる筆記と口述に合格

『思ったより長い道のりだな』と感じますよね。どの段階にも試験や経験の条件があるので、長い目で計画を立てることが大切なんです。

試験の中身のちがい

司法試験は、裁判官・検察官・弁護士になろうとする人のための試験です。一方の検察官特別考試は、副検事を経験した人を検事にするための試験で、「検察の実務」という科目があるのが大きな特徴なんです。

副検事になるための選考については副検事になるには(副検事選考試験)を読んでみてください。

検察官特別考試の仕組みと合格者数

筆記7科目と口述4科目

検察官特別考試令では、筆記は憲法・民法・商法・民事訴訟法・刑法・刑事訴訟法・検察の実務の7科目、口述は憲法・刑法・刑事訴訟法・検察の実務の4科目と決められています。

ここからは、副検事から検事になるための検察官特別考試を見ていきましょう。

考試の流れ

検察官特別考試の流れ
  1. 受験する人が、検事長を通して審査会に願書を出す
  2. 検事長が、受験する人の考査書を作って送る
  3. 筆記試験を受ける(合格しないと口述に進めない)
  4. 口述試験を受ける(検察の実務は考査書の記載も参考にされる)
  5. 合格すると合格証書がもらえる
検察官特別考試の、願書の提出から筆記・口述を経て合格証書の付与までの流れを順番に示した図解

考試を行うのは、法務省の「検察官・公証人特別任用等審査会」です。考試令では、毎年1回以上行うとされています。

科目と免除のしくみ

段階科目
筆記憲法、民法、商法、民事訴訟法、刑法、刑事訴訟法、検察の実務
口述憲法、刑法、刑事訴訟法、検察の実務

筆記に合格した人は、申請すれば次の回の筆記試験が免除されます。また、司法修習生となる資格を得た人は、申請により「検察の実務」以外の筆記・口述が免除されるんです。

副検事選考よりも科目が多い

副検事選考の科目は5つでしたが、検察官特別考試の筆記は7科目です。商法や民事訴訟法など、副検事選考にはない科目が加わります。

「検察の実務」と考査書

検察官特別考試ならではの科目が「検察の実務」です。副検事として積んできた仕事の経験が、そのまま問われる科目と言えます。

考試令では、受験する人の願書は検事長を通して出され、検事長が考査書を作ることになっています。そして口述の「検察の実務」は、この考査書の記載を参考にして行われるんです。

つまり、試験の日だけでなく、ふだんの仕事ぶりも見られる仕組みと考えておきましょう。

合格者はごくわずか

法務省の議事概要に載っている、直近の結果は次のとおりです。

年度筆記試験筆記の結果
令和8年度7月6日〜8日受験者13人中1人合格(口述は10月予定・最終結果は未発表)
令和7年度7月2日〜4日受験者8人中、合格者なし
令和6年度7月2日〜4日受験者8人中、合格者なし

受験する人も合格する人も、とても少ないのが分かりますよね。副検事から検事への道は、法律で開かれていても、かなり狭い道なんです。

よくある勘違い

「副検事を3年やれば、自動的に検事になれる」というわけではありません。3年以上の経験は受験の条件で、検察官特別考試に合格して初めて検事に任命される道が開けます。

特任検事と、司法試験から検事になった人・弁護士との違い

検事になった後は、同じ検事

特任検事も、任命された後は法律上ふつうの検事です。ただ、司法修習を終えていない点が、ほかの検事との大きな違いになります。

『特任検事って、普通の検事と仕事は違うの?』という疑問も多いですよね。

検察庁法では、特任検事も二級の検事に任命されます。さらに、一級の検察官になる資格を考える時は、司法修習を終えた人と同じに扱うと決められています。

例えば、こんな会話を想像してみてください。

「特任検事は、一級の検事にはなれないの?」
「一級の資格を考える時は、司法修習を終えた人と同じ扱いになるんだって」

特任検事と弁護士の関係

特任検事と弁護士の関係を気にする方もいます。司法試験ルートの人は、司法修習を終えると検事・裁判官・弁護士のどれにでもなれる資格を得ます。

一方、特任検事は司法修習を経ていません。特任検事が退官した後に弁護士になれるかどうかは弁護士法の定めによるもので、この記事の調べでは確認できていません。気になる方は、弁護士会などの公的な窓口に確かめてみてください。

検事を辞めた後の道については元検事の弁護士(ヤメ検)とは?で紹介しています。

特任検事を目指す前に確かめたいこと
  • 今の職が、副検事選考の受験資格に当たるか
  • 副検事として3年以上働く見通しが立つか
  • 筆記7科目に向けた勉強の時間をとれるか
  • 司法試験ルートとどちらが自分に合うか

検事になる道全体は検事になるには?で、検事の仕事のあらましは検事とは?で紹介しています。

副検事ルートは狭い道なので、最初から検事を目指すなら、入口は司法試験(予備試験)です。早めに試験の全体像と勉強の進め方を知っておくと、選べる道が広がりますよ。

司法試験・予備試験の情報

検事をめざすなら、まずは司法試験・予備試験の全体像から

検事になる入口は司法試験です。受験資格の3つのルート(法科大学院・在学中受験・予備試験)や試験の日程を公式の案内で確かめて、自分に合う勉強の進め方を考えてみてください。

無料司法試験・予備試験の案内を見る

試験の日程・受験資格は法務省の最新の案内でご確認ください。

特任検事についてよくある疑問

知恵袋で多い質問に答えます

特任検事について、よく読まれている質問を選んで答えます。

事務官から副検事、そして特任検事になるのはどのくらい難しい?

「検察事務官になってから、順調に副検事、特任検事になるのはどのくらい難しいの?」という質問は、とても多く読まれています。

副検事選考は、令和7年度に27人が最終合格しました。一方の検察官特別考試は、令和6年度・令和7年度とも筆記の合格者がいませんでした。

数字で見ると、副検事になる段階よりも、副検事から検事になる段階のほうがずっと狭いんです。

司法試験からの検事と、特任検事に違いはある?

「司法試験に受かってなる検察官と、副検事の後になる特任検事は、過程以外に何か違いがある?」という質問もありました。

検事に任命された後は、どちらも法律上は同じ検事です。違いは、司法修習を経ているかどうかという点です。

ただ、一級の検察官になる資格を考える時は、特任検事も司法修習を終えた人と同じに扱われます。

毎年、副検事から何人くらい検事になる?

「副検事から検事には、毎年何人くらいなっているの?」という質問もありました。

検察官特別考試の最終の合格者数を年ごとにまとめた公表値は、この記事の調べでは見当たりません。ただ、筆記の段階で令和6年度・令和7年度は合格者なし、令和8年度は1人なので、とても少ないことは確かです。

なお、副検事選考の最終合格は令和6年度が29人、令和7年度が27人でした。副検事になる人にくらべて、検事になる人はかなりしぼられるんです。

よくある質問

特任検事とは何ですか?

副検事を3年以上務め、検察官特別考試に合格して検事に任命された人の通称です。法律上の官名は「検事」です。

副検事から検事になるには何が必要ですか?

検察庁法では、3年以上副検事の職にあり、検察官特別考試に合格することが必要とされています。

検察官特別考試の科目は何ですか?

筆記は憲法・民法・商法・民事訴訟法・刑法・刑事訴訟法・検察の実務の7科目、口述は憲法・刑法・刑事訴訟法・検察の実務の4科目です。

特任検事は弁護士になれますか?

特任検事は司法修習を経ていないため、司法試験ルートの人とは事情が違います。弁護士になれるかは弁護士法の定めによるので、弁護士会などの公的な窓口で確かめてみてください。

検察官特別考試の合格者は多いですか?

とても少ないです。法務省の議事概要では、令和6年度・令和7年度とも筆記の受験者8人中、合格者はいませんでした。

まとめ

この記事の要点
  • 特任検事とは、副検事から検察官特別考試を経て検事になった人の通称
  • 条件は、3年以上副検事を務め、検察官特別考試に合格すること
  • 考試は筆記7科目と口述4科目で、合格者はごくわずか
  • 任命された後は、法律上ふつうの検事として働く
検事ドットコム

検事ドットコム 編集部

検事・検察官の仕事や役職、検事・副検事・検察事務官のなり方と試験、送致・起訴・公判といった刑事手続きのしくみを、法令と公的機関の情報をもとにわかりやすく整理している情報サイトです。 公式サイト

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次