捜査検事と公判検事の違い|刑事部・公判部・本部係検事の役割

捜査検事と公判検事の違い、本部係検事の役割を紹介する記事のアイキャッチ。法廷の机と書類

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『起訴した検事と、裁判に出てくる検事が別の人って本当?』と気になったことはありませんか。

結論から言うと、大きな検察庁では、事件を調べて起訴するかを決める「捜査検事」と、法廷で立証する「公判検事」で担当が分かれていることがあります。捜査検事は主に刑事部、公判検事は公判部の検事です。

この記事を読めば、2つの違いと、凶悪重大事件で発生当初から動く本部係検事の役割まで分かります。

目次

捜査検事と公判検事の違いをまず表で

先に結論

捜査検事とは、警察から送られた事件などを調べ、起訴するかどうかを決める検事です。公判検事とは、起訴された事件の裁判に立ち会い、証拠で事実を証明する検事です。どちらも正式な官名ではなく、受け持つ仕事による呼び方です。

「捜査検事」も「公判検事」も、検察庁法に出てくる言葉ではありません。官名はどちらも「検事」で、どの部署で何を受け持つかによる呼び名なんです。

まずは、2つの違いを表で見てみましょう。

くらべるところ捜査検事公判検事
主な部署刑事部(特別捜査部などもある)公判部
受け持つ段階送致から起訴するかの判断まで起訴の後から判決まで
主な仕事取調べ、現場の確認、補充捜査の指示、処分の判断起訴状の朗読、冒頭陳述、証人尋問、論告求刑
主な仕事場検察庁の執務室、事件の現場法廷、検察庁の執務室
向き合う相手被疑者、参考人、警察裁判官(裁判員)、弁護人、証人

被疑者は、罪を犯した疑いで捜査を受けている人のことです。起訴されると、呼び方が「被告人」に変わります。

捜査検事とは?

検察庁のパンフレット(令和6年度版)では、刑事部は捜査を担当している部署と説明されています。

警察が捜査して検察庁に送った事件について、被害者などから事情を聞き、現場の状況を確かめ、被疑者を取り調べます。そのうえで、被疑者が犯人かどうかなどを検討し、起訴するかを判断するんです。

検事採用サイトのインタビューでは、捜査担当の検事は、まず警察が集めた証拠をもとに「どんな事件なのか」「全体はどうなっているのか」と、さまざまな可能性を考えると紹介されています。

公判検事とは?

同じパンフレットでは、公判部は裁判を担当している部署とされています。起訴された事件の裁判に立ち会い、適正で速やかな手続きを確保したうえで、事件の真相を明らかにする立証をします。

公判は、法廷で開かれる刑事裁判のことです。検事と裁判のつながりがいちばん強いのが、この公判検事ですね。

捜査検事の主な仕事
  • 送られた事件の記録を読み込む
  • 被疑者や参考人を取り調べる
  • 警察に補充の捜査を頼む
  • 起訴するか、しないかを決める
公判検事の主な仕事
  • 証拠を改めて点検する
  • 法廷で起訴状を読み上げる
  • 証人に質問して事実を証明する
  • 論告で刑についての意見を述べる

1つの事件をリレーで見る:どこを誰が受け持つ?

ここでの結論

1つの事件を「送致」「捜査」「起訴の判断」「公判」「判決」の5区間に分けると、捜査検事は前半の3区間、公判検事は後半の2区間を受け持つイメージです。本部係検事は、送致より前の事件発生の直後から走り始めます。

担当が分かれていると言われても、具体的にはイメージしにくいですよね。そこで、1つの事件をリレーにたとえて並べてみました。

1つの事件を送致・捜査・起訴の判断・公判・判決の5区間に分け、本部係検事・捜査検事・公判検事が受け持つ区間を示したリレー図
区間何をするか主に受け持つ検事
0 事件の発生捜査本部ができた凶悪重大事件では、現場へ向かう本部係検事
1 送致警察から記録や証拠、被疑者を受け取る捜査検事
2 捜査取調べ、補充捜査の指示、証拠の検討捜査検事
3 起訴の判断公判請求・略式命令請求・不起訴のどれにするかを決める捜査検事
4 公判冒頭陳述、証拠調べ、証人尋問、論告求刑公判検事
5 判決判決の内容を確かめ、不服があれば上訴を検討する公判検事など

区間3で「不起訴」になった事件は、区間4には進みません。また「略式命令請求」は、法廷を開かずに書面で罰金などを決めてもらう手続きなので、公判検事の出番はないんです。

バトンの受け渡しで起きること

公判部の検事は、捜査で集められた証拠を受け取ると、まず中身を点検します。検事採用サイトのインタビューでは、起訴された事実や手続きに問題はないか、証拠は十分かを「捜査担当の検事とは別の目で」改めて検討すると紹介されています。

例えばこんな場面です。裁判が始まってから、被告人の言い分が捜査の時と変わることがあります。そんな時は、公判部でも捜査をして、新しく証拠を集めることもあるそうです。

分かれ方は検察庁によって違う

検察庁のホームページでは、検察庁の規模などに応じて、部や課・室の名前と数は変わると説明されています。刑事部と公判部の分かれ方も、すべての検察庁で同じとは限りません。

本部係検事とは?事件の発生直後から動く検事

ここでの結論

本部係検事とは、殺人などの凶悪重大な事件のうち、警察本部長が捜査本部を設置した事件を取り扱う検事です。検事採用サイトによると、全国の地方検察庁に配置されています。

『本部係検事って、どんな検事なの?』と思った方も多いはずです。名前だけでは中身が想像しにくいですよね。

検察では、捜査本部が設置された事件を「本部事件」と呼びます。本部係検事は、この本部事件の捜査に、事件が起きた当初から関わる検事なんです。

本部係検事の動き方

検事採用サイトの刑事部検事のインタビューをもとに、動き方を並べてみますね。

本部係検事の動き方(検事採用サイトより)
  1. 警察本部長が捜査本部を設置した事件を受け持つ
  2. 事件発生の一報を受けると、検察事務官と一緒にすぐ現場へ向かう
  3. 発生当初から、本部事件の捜査に関わる

ふつうの捜査検事は、警察から事件が送られてきてから本格的に関わります。本部係検事は、それより前の段階から関わるのが大きな違いです。

3つの担当をくらべると

ここまでの3つを、事件に関わり始めるタイミングでくらべてみましょう。

担当関わり始めるタイミング主な仕事場
本部係検事事件発生の一報を受けた直後事件の現場、捜査本部、検察庁
捜査検事警察から事件が送られてきた時(独自捜査は自ら始める時)検察庁の執務室、事件の現場
公判検事起訴された後法廷、検察庁の執務室

捜査検事の仕事を細かく見る:検事の捜査でできること

ここでの結論

検察庁法第6条は「検察官は、いかなる犯罪についても捜査をすることができる」と決めています。捜査検事は、警察から送られた事件を調べるだけでなく、警察に指示を出したり、自分で捜査を始めたりもします。

『検事って、自分で事件を捜査するの?』と意外に感じる方もいますよね。実は、検事の捜査は法律でしっかり決められた仕事なんです。

捜査検事が使う主な権限

捜査検事が使う主な権限を、刑事訴訟法の条文からまとめてみました。

捜査検事の主な権限(刑事訴訟法より)
  • 必要と認める時は、自ら犯罪を捜査できる(第191条)
  • 警察に捜査の一般的な指示・指揮ができる(第193条)
  • 被疑者や参考人の出頭を求め、取り調べられる(第198条・第223条)
  • 裁判官に勾留を請求できる(第204条・第205条)
  • 起訴するか、起訴を見送るかを決められる(第247条・第248条)

検察官と警察は、捜査について互いに協力しなければならないとも決められています(第192条)。上下というより、段階ごとに役割が分かれていると考えると分かりやすくなります。

捜査には時間の決まりがある

警察が逮捕した事件では、捜査検事は時間との勝負になります。逮捕から48時間以内に送致され、受け取ってから24時間以内(逮捕から72時間以内)に、勾留を求めるか、起訴するか、釈放するかを決めます。

勾留されたら、勾留請求の日から原則10日以内、延長しても通じて10日までの間に、起訴するか釈放するかを決めます。送致の後の流れは検察官送致(送検)とは?でくわしく紹介しています。

捜査検事が最後に選ぶ処分

捜査の締めくくりに、捜査検事は処分を決めます。『起訴か不起訴かの2択でしょ?』と思いがちですが、実はもう少し種類があるんです。

処分どういうものか(検察庁の説明より)
公判請求法廷で裁判を開くよう求める起訴
略式命令請求被疑者の同意を得て、簡易裁判所が書面だけで罰金などを決める起訴
不起訴(嫌疑なし)人違いが明らかになったなど、疑いがない場合
不起訴(嫌疑不十分)犯罪が成り立つと認める証拠が足りない場合
不起訴(起訴猶予)証拠上は明らかでも、事情を考えて訴追の必要がないと判断した場合

公判請求を選んだ事件だけが、公判検事へバトンとして渡されます。どの処分にするかは、捜査検事が上司の決裁を受けて決めると、パンフレットの1日の流れでも紹介されています。

取調べの録音・録画

刑事訴訟法第301条の2は、一部の事件で取調べの録音・録画を義務にしています。令和元年6月1日に始まった制度です。

対象は、裁判員裁判の対象とおおむね同じ重い事件と、警察から送られたのではない検察官の独自捜査事件です。逮捕・勾留されている被疑者を取り調べる時は、例外に当たる場合を除いて録音・録画をします。

自分や家族が呼び出された時は

この記事は、一般的な制度の紹介です。検察庁から呼び出しを受けたなど、具体的な手続きが気になる時は、法テラスや弁護士会などの窓口で弁護士に相談してみてください。

公判検事の仕事を細かく見る:検事と裁判のかかわり

ここでの結論

公判検事は、法廷で「起訴状の朗読」「冒頭陳述」「証拠調べの請求」「証人尋問」「論告求刑」を行います。検察官が裁判で担うのは、真実の立証と、適正で速やかな刑の実現を裁判所に求める役割です。

検察官と裁判というと、法廷で被告人に質問する場面を思い浮かべますよね。ただ、法廷に立つ前の準備にもかなりの時間を使っています。

法廷で公判検事がすること

刑事訴訟法と検察庁の説明をもとに、法廷での流れを並べてみました。

公判での検察官の流れ
  1. 起訴状を朗読する(刑事訴訟法第291条)
  2. 冒頭陳述で、証拠によって証明する事実を明らかにする(第296条)
  3. 証拠調べを請求する(第298条)
  4. 証人尋問などで立証する
  5. 論告で、事実と法律の適用についての意見を述べる(第293条)
公判で検察官が行う起訴状の朗読・冒頭陳述・証拠調べの請求・証人尋問・論告求刑の流れを示した図解

論告の中で、どんな刑がふさわしいかの意見を述べるのが「求刑」です。くわしくは検事の求刑とは?で紹介しています。

法廷に立つ前の準備

公判部の検事の1日は、検察庁のパンフレット(令和6年度版)に紹介されています。朝に立会事務官と予定を確かめ、記録を持って裁判所へ行き、戻ってから上司に報告・相談します。

そのあと、新しく受け持った事件の記録を読み、冒頭陳述や論告の書類を準備します。証言する予定の被害者や目撃者、医師などの専門家との打ち合わせもあります。

検事採用サイトのインタビューでは、裁判員裁判などの重大事件では、裁判の前に冒頭陳述や論告のリハーサルをするのが一般的と紹介されています。

判決の後も公判検事の仕事は続く

刑事訴訟法第351条は、検察官も上訴ができると決めています。法務省の説明では、判決の事実の認め方や刑の重さが不当だと考える時に上訴することもあります。

控訴の期間は14日です。控訴された事件は、高等検察庁が取り扱います。

特捜部・特別刑事部など、ほかの担当検事

ここでの結論

刑事部と公判部のほかにも、特別捜査部(特捜部)や特別刑事部、公安部などの部があります。検察庁事務章程で、部ごとに受け持つ事件が決められています。

『刑事部と公判部しかないの?』という疑問もありますよね。実は、ほかにもいくつかの部があります。

検察庁事務章程の別表をもとに、主な部の受け持ちを並べてみました。

部主に受け持つこと(検察庁事務章程より)
刑事部事件の捜査と処分の決定(ほかの部が受け持つものを除く)
公判部公判の運営、公判の遂行、公判での検察官の意見の調整など
特別捜査部財政経済関係の事件と、検事正があらかじめ指定する事件の捜査と処分の決定
特別刑事部公安関係・労働関係・財政経済関係の事件などの捜査と処分の決定

特捜部は、東京・大阪・名古屋の地方検察庁にだけ置かれています。くわしくは特捜検事とは?で紹介しています。

「担当検事」という言い方

ニュースや手続きの案内で「担当検事」という言い方を見かけることもありますよね。これは、その事件を受け持っている検事のことです。

検察庁のパンフレットでは、送られてきた身柄事件について、決裁官から事件の「配点」を受けると紹介されています。配点とは、事件の担当を割り当てることです。

最先端の犯罪を受け持つ組織もある

最高検察庁には、情報通信技術を使った「先端犯罪」について、情報を集めたり、捜査・公判を支援したりする組織(JPEC)があります。検事採用サイトでは、先端犯罪担当検事として紹介されています。

捜査検事と公判検事についてよくある疑問(知恵袋より)

ここでの結論

知恵袋では「なぜ起訴する検事と裁判に出る検事が違うのか」「どちらが格上なのか」「捜査検事はいつ事件を知るのか」という質問がよく読まれています。

捜査検事と公判検事について、知恵袋でよく読まれている質問を要約して答えてみますね。

疑問1:なぜ起訴する検事と裁判に出る検事が違うの?

いちばん読まれていたのが、この質問です。「同じ検事が続けて担当した方が、事件をよく分かっているのでは」という声もありました。

そう感じるのは自然です。分担の理由を検察庁が正式に説明したページは見当たりませんが、検事採用サイトのインタビューにヒントがあります。

公判部の検事は、捜査担当とは別の目で、起訴された事実や証拠を改めて点検すると紹介されています。別の人が見直すことで、裁判に向けた立証の準備を固める意味があると読み取れます。

例えばこんなイメージです。「この証拠で、本当に裁判官に伝わるかな」と、捜査に関わっていない人の目で確かめ直すわけですね。

疑問2:公判検事と捜査検事は、どちらが格上?

「優秀な検事はどちらに回されるのか」という質問です。結論から言うと、どちらが上という公的な決まりはありません。

捜査検事も公判検事も、官名は同じ検事です。検察庁事務章程でも、刑事部と公判部は受け持つ仕事が違うだけで、上下の関係として書かれてはいません。

検事採用サイトのキャリアの紹介では、任官直後から刑事事件の捜査・公判を任されるとされています。どちらも経験しながら力をつけていく仕事だと考えておきましょう。

疑問3:捜査検事は、いつ事件を知るの?

「警察に被害届が出た時点で、捜査検事は事件を知っているのか」という質問です。

ふつうの事件では、警察から事件が送られてきた時に、本格的に関わり始めます。一方で、捜査本部ができた凶悪重大事件では、本部係検事が発生当初から関わります。

検察官が自分で捜査を始める独自捜査の事件もあります。その場合は、検察官のほうから事件を見つけて捜査することになりますね。

検事の仕事に興味を持った人へ

捜査も公判も、検事として任官してから受け持つ仕事です。検事を目指すなら、入口は司法試験(予備試験)です。

法科大学院で学ぶ道も、予備試験から受ける道もあります。早めに試験の全体像と勉強の進め方を知っておくと、選択肢が広がりますよ!

司法試験・予備試験の情報

検事をめざすなら、まずは司法試験・予備試験の全体像から

検事になる入口は司法試験です。受験資格の3つのルート(法科大学院・在学中受験・予備試験)や試験の日程を公式の案内で確かめて、自分に合う勉強の進め方を考えてみてください。

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試験の日程・受験資格は法務省の最新の案内でご確認ください。

検察官の仕事の全体は検察官の仕事内容で、検事そのものについては検事とは?で紹介しています。

よくある質問

捜査検事とは何ですか?

警察から送られた事件などを調べ、起訴するかどうかを決める検事のことです。主に刑事部の検事を指し、取調べや補充捜査の指示、処分の判断をします。

公判検事とは何ですか?

起訴された事件の裁判に立ち会い、証拠で事実を証明する検事のことです。主に公判部の検事を指し、冒頭陳述や証人尋問、論告求刑を行います。

本部係検事とは何ですか?

殺人などの凶悪重大な事件のうち、警察本部長が捜査本部を設置した事件を受け持つ検事です。事件発生の一報を受けると、検察事務官と一緒に現場へ向かいます。

捜査検事と公判検事はいつも別の人ですか?

大きな検察庁では分かれていることがありますが、部の名前や数は検察庁の規模などによって変わります。すべての検察庁で同じ分け方とは限りません。

検事は裁判で何をしますか?

起訴状の朗読、冒頭陳述、証拠調べの請求、証人尋問、論告求刑を行います。判決に不服がある時は、上の裁判所に上訴することもあります。

まとめ

この記事の要点
  • 捜査検事は事件を調べて起訴するかを決める検事で、主に刑事部の検事
  • 公判検事は裁判に立ち会って立証する検事で、主に公判部の検事
  • 本部係検事は捜査本部ができた凶悪重大事件に発生当初から関わる
  • 公判検事は捜査担当とは別の目で証拠を点検し直す
  • どちらが上という公的な決まりはなく、官名はどちらも検事
検事ドットコム

検事ドットコム 編集部

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